沈黙の臓器「肝臓」疾患の特徴とは? 血液検査などの項目とその内容
「肝心かなめ」という言葉があります。「もっとも重要なこと」を意味する慣用句で、「肝腎かなめ」とも。心電図検査やエックス線検査が存在しなかった時代から、日本人がいかにこれらの臓器を重要視してきたかがわかるのではないでしょうか。
医学が発達した現代でもそれは同じ。肝臓は常に機能し続けていなければ健康を守ることはできません。
ここでは「肝臓」に焦点をしぼって、肝疾患の特徴や検査の方法、血液検査数値のポイントなどをご紹介したいと思います。
肝臓にどんな疾患があるのか把握しておこう
●肝臓にはどんな病気が起こるのか
肝臓の疾患には「感染型」と「非感染型」の2種類に大別できます。
ウイルスによる「感染型」の肝疾患の中でも「A型肝炎」「B型肝炎」「C型肝炎」は特に有名です。また、肝炎ウイルスの感染によって急激な症状を呈するものを「急性肝炎」。炎症が徐々に進行して慢性化するものを「慢性肝炎」と区別します。
一方、「非感染型」肝疾患には、「自己免疫性肝炎」「原発性胆汁性肝硬変」「肝癌」「脂肪肝」などがあります。症状によっては、肝硬変に伴って意識障害が起こるケースがあり、「肝性脳症」と呼ばれます。
●肝疾患になった時の症状とは
肝臓病は自覚症状がなかなか出ないため、「サイレントキラー」と呼ばれています。
生活の中で気づく自覚症状では、「全身がむくむようになった」「どことなく疲れやすい・だるい」「黄疸がある」「食欲がない」など。あるいは発熱、頭痛、関節痛など、風邪に近い症状が肝疾患のサインである可能性も見られます。肝臓の炎症が慢性化し、悪化してしまうと肝硬変へと進行します。
肝臓病が疑われる際にするべきこと
●どんな検査を受ければいいの?
肝疾患で最も重要なのは、早期発見と早期治療です。異変を察知したらすぐに必要な検査を受けるようにしましょう。
肝臓の病気を発見し、確定するには「血液検査」「造影検査」「超音波検査」「MRI検査」「肝生検」などを行います。血液検査などで病気の可能性が高いと診断された場合、肝臓に針を刺して肝組織を摘出、顕微鏡で状態を診察する「肝生検」を行う場合が多いです。
続いて、血液検査の数値で肝機能を確認するチェックポイントをご紹介します。
●血液検査の数値で肝機能を確認するポイント・正常値の目安
肝細胞の変性や壊死を現す数値には、以下のような酵素の量を示す数値があります。
「ALT」正常値0から35IU / L
「AST」正常値5から40IU / L
「LDH」正常値(男性)60IU / L以下(女性)30IU / L以下
肝細胞の機能、働き具合を測る数値には、次のようなものが挙げられます。
「コリンエステラーゼ(ChE)」正常値1,060から1,820IU / L
「総コレステロール」正常値120から250mg / dL
「胆汁酸」10μmol / L以下
「総ビリルビン」正常値1mg / dL
脂肪やたんぱく質の分解を助ける「胆汁の流れ」を見る数値として。
「γ-GTP」正常値0から40IU / L
以上の数値項目の中でも特に注目すべきは「ALT」と「γ-GTP」です。
ALT高値ならばほぼ肝機能障害と思っていいでしょう。γ-GTPは飲酒量が反映されるので、不摂生がそのまま数値に現れます。
血液検査などの予備的な検査で肝機能障害が疑われる場合、「超音波検査」「CT検査」「MRI検査」などの画像検査へと進みます。
超音波検査はほぼノーリスクで行える画像検査であるため、妊娠中の女性であっても利用できる点が魅力です。同様にCT検査は病変部位がどこにあるか確認できる点、MRI検査は良性・悪性の判断まで見極められる点が特徴と言えるでしょう。
ただし本格的な診断を出す場合は画像検査だけでなく、実際の肝組織をチェックする精密検査も必要です。次は画像検査を含む検査行程について見てみましょう。
●検査に伴う負担を減らす方法とは
肝機能の状態をチェックする検査には、実に多種多様な行程が存在します。
単独の検査で肝機能障害が疑われたとしても、最終的には病理学検査にかけなければ治療方針は決められません。血液検査などの予備的な検査から、各種画像検査、さらに肝生検といった検査行程を経る必要があるのです。各種検査を新たに予約・受信するのは、時間的にも予算的にも患者の負担が大きくなってしまいます。
このような検査の負担を減らすためには、初歩の検査から肝生検まで、必要に応じてすべてを網羅できるコースで受診できる「人間ドック」をおすすめします。
人間ドックは1日や半日というコンパクトなスケジュールで必要な項目を盛り込めるので、忙しい方に最適です。費用や不安点などを医師に相談して、どの検査を受けるのか決めるようにしてください。
肝臓は強靭な臓器であるからこそ、なかなか異常を表に出してきません。
日常生活の中で異変を感じた方、健康診断の血液検査で肝機能の低下を指摘された方は、くれぐれも放置せずに専門家の意見を求めるようにしましょう。