がんドックの必要性を自覚症状の有無から検証する
日本人のがんリスクは年々上昇を続けています。かつてはその存在すら一般には知られていなかった希少がんすらメディアで話題に上るほど。
日本人全体で見れば、一生のうちにがんに罹患する確率は2人に1人。最新のがん情報によると、生涯がんリスクは男性63%、女性47%となっています。発症後の5年生存率が上がっている領域もあるとはいえ、がんは初診時に4割が無自覚です。初期症状が出にくく、多くの症状が現れてから受診した結果すでに末期だったというケースも少なくありません。
そこで定期的ながんドックが推奨されるようになりました。健康診断や通常の人間ドックでいいのではないかという方もいらっしゃいますが、自覚症状が薄い病気だからこそがんに特化した「がんドック」が必要だと認識するべきなのではないでしょうか。
がんドックは人間ドックの中でも特にがんを発見し、どのようながんなのか種別を特定するために必要な検査項目を集めたものです。
「がんドック」の必要性を現状から探る
・がんが見つかる患者の4割は自覚症状がない
厚生労働省が2011年に実施した医療機関への調査によると、がんが見つかった患者のうち「自覚症状がなかった」と回答した割合は41.5%でした。がんに限定しない場合はこの割合は24.7%に減少します。つまり、「がん」という病気は初期段階での自覚が難しいのだと考えていいでしょう。
実際、多くのがんは静かに発生して進行します。健康診断で血液検査などの数値が変化すれば再検査で発見されることもあるはずです。しかし、定期検診のない職業に従事している方、専業主婦の方、忙しくて検診を回避してしまっている方などは、発見が遅れて治療が困難になるケースが多いので注意してください。
・早期治療が生存率を上げる決め手
がんという病気は進行するほどに治療が困難になります。ほかの病気疾患でもそれは同じですが、がんには「転移」という現象がありますよね。胃から肺へ、循環器系から多臓器へといった具合に、離れた場所に飛び火するのです。そうなれば手術療法も適用できず、生存率は低下するばかり。
何よりも早期治療が大事ということは、つまり「早期発見」こそが命を長らえる最善の道ということです。自覚が難しいために早期発見、早期治療が難しい上に健康診断ではなかなか初期段階のがんを見つけられません。「がんドック」の必要性は明らかだと言っていいでしょう。
がんドックの主な検査内容
・大腸内視鏡検査
胃カメラのように身体の中に内視鏡を挿入するので、病変部位の確定や状態の確認が可能です。詳細な検査と検体採取、場合によっては治療も同時に行えます。治療を受ける側、実施する側双方にメリットが非常に大きい検査項目と言えるでしょう。
・マンモグラフィ
乳がんに特化したエックス線検査のこと。「乳房エックス線検査」を意味します。乳がんの早期発見に役立ちます。視診、触診と合わせれば発見率もかなり高くなりますよ。
専用の撮影機器で乳房を挟み、エックス線透過画像を撮影する検査です。
・超音波検査
超音波検査(エコー)は画像診断のため患部を傷つけずに実施できます。状態を目で確認できる非常に有益な検査です。健康診断ではエコー検査はありません。人間ドックならではの項目。身体の表面から超音波をあてて身体の内側を画像化し、病変がないか診断する検査です。
・腫瘍マーカー
腫瘍マーカーは血液スクリーニング(血液検査)で行うので、患者負担の少ない検査と言っていいでしょう。ただし、腫瘍マーカーの検査単独ではがんの確定診断はできないので、画像診断、検体検査へと進むことになります。初期がん発見に役立ちます。
血液を採取し、がんが疑われる部位にターゲットを絞って炎症反応を調べる手法です。
・肺CT検査
肺がんは日本人の死因第一位の悪性新生物の中でも最も比重が大きながんです。死亡率の高さでは何より警戒すべきがんであり、その発見に欠かせない肺がん検査で特に重要な手がかりになるのが肺CT検査です。肺の断層画像を目で見て確認する検査で、数ミリ程度の小さな肺がんも見つけられます。
・喀痰細胞診
患者に肉体的負担がかからないため、受診を推奨できる検査です。喀痰検査とは痰を採取してがん細胞の有無を調べるもので、上皮性がん、特に気管支から発生したがんの発見に役立ちます。ただし、がんを発症していても常にがん細胞が痰に混じるわけではありません。一般的には数日間連続して痰を採取します。
最終的にがんを確定するには「細胞診」が必要ですが、がんドックではがんの可能性がある方に順序立てた検査で確定まで計画して提案してくれます。
もはやがんは「誰に起こっても不思議がない」当たり前の病気になりました。治療の成否を分けるのは当人の備えです。ぜひ定期的にがんドックを受け、がんに備えてください。