風しん抗体を調べる検査方法は?結果の見方についても解説
妊娠すると、妊婦検診の時に風しん抗体検査がおこなわれます。これは、妊娠した母体に風しん抗体がない場合、生まれてくる赤ちゃんに影響があるためです。
風しん抗体と言われても、抗体がないとどんなことが起こるの?と思う方もいるでしょう。
こちらの記事では、風しん抗体がない場合にどんなことが起きるのか、風しん抗体を調べる方法、検査結果の見方について解説しています。
風しんについて気になる方はぜひ参考にご覧ください。
風しん抗体がないとどうなる?
風しんは、風しんウイルスによって引き起こされる発疹性感染症です。感染すると2~3週間の潜伏期間ののち、発熱や発疹、耳の後ろのリンパ節が腫れるといった症状があらわれます。子どもは比較的軽症で済むことも多いのですが、2千人~5千人に1人くらいの割合で脳炎や血小板減少性紫斑病などの合併症になることがあります。大人が感染すると子どもよりも発熱や発疹の症状が長引き、ひどい関節痛になることがあります。
風しんウイルスはヒトからヒトへと飛沫感染します。1人の風しん患者から5~7人に感染させる強さがあり、風しん抗体がないヒトが感染した場合、さらに抗体のないヒトへと感染拡大させてしまうのです。
もしも、妊娠20週までの女性が、風しん抗体がないまたは不十分な状態で風しんに感染した場合、眼や耳、心臓などに障害を持つ先天性風しん症候群の子どもが生まれてくることがあります。その確率としては、妊娠0~3週(妊娠1カ月)までに感染した場合は50%以上、妊娠4~7週(妊娠2カ月)に感染した場合は35%とされています。
妊娠中は、風しん抗体がないとわかっても予防接種を打つことはできませんので、風しん感染しないように対策をするしかありません。
風しん抗体の検査方法は?
風しん抗体は採血によって検査することができます。風しん抗体がどれくらいあるのかを測定する方法は、HI法(赤血球凝集抑制試験)、EIA法(酵素抗体法)があります。
HI法
採血した血液から凝固因子を取り除いた血清を使って検査します。風しんウイルスに動物の血液に加わると、赤血球を凝集する性質があります。しかし、血清の中に風しん抗体があれば、風しんウイルスが加えられても凝集が抑制されます。その性質を利用して、血液中に風しん抗体がどれくらいできているのかを調べることができます。
EIA法
EIA法(酵素抗体法)は、検査キットを使い抗原や抗体を直接酵素と結合させて反応させることによって、風しん抗体があるのかどうかを調べます。なお、EIA価は使用するキットによって違いがあります。
風しん抗体検査の結果の見方は?
風しん抗体検査の結果は以下に説明していますので、ご確認ください。
HI法
HI法による風しん抗体検査結果は8の倍数で示されます。
・抗体価が8倍未満
風しんの免疫がありませんので、風しんの予防接種を推奨します。
・抗体価が8倍・16倍
風しんの免疫はあり、風しんの発症や重症化を防ぐことができます。しかし、妊娠を希望する女性などの場合は、風しんの感染予防には不十分なため、風しんの予防接種を推奨します。
・抗体価が32倍以上
風しんの感染予防に十分な免疫があると考えられます。
EIA法
・陰性または判定保留
風しんの免疫がありませんので、風しんの予防接種を推奨します。
・陽性(EIA価8.0未満または国際単位①30IU/mL未満、国際単位②45IU/mL未満)
風しんの免疫はあり、風しんの発症や重症化を防ぐことができます。しかし、妊娠を希望する女性などの場合は、風しんの感染予防には不十分なため、風しんの予防接種を推奨します。
・陽性(EIA価8.0以上または国際単位①30IU/mL以上、国際単位②45IU/mL以上)
風しんの感染予防に十分な免疫があると考えられます。
※EIA価はデンカ生研社製、国際単位①(IU/mL)はシーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社、極東製薬工業株式会社、国際単位②(IU/mL)はシスメックス・ビオメリュー株式会社、ベックマン・コールスター株式会社の風しんIgG測定キットを使用した場合の判定基準です。
まとめ
風しんは本来感染力の強いものですが、現在は予防接種の普及により感染拡大することはあまりありません。しかし、風しん抗体を持たない妊娠初期の女性が感染してしまうと、おなかの中の赤ちゃんも感染してしまい、眼や耳、心臓などに障害を持って生まれてくる可能性があります。自分が感染しない人に感染させないためには、風しん抗体検査をして免疫がない場合は予防接種をするほかありません。特に妊娠を希望する女性やそのパートナーは、あらかじめ風しん抗体検査をおこなうことをオススメします。