【ワクチンの意義・役割】今一度考えてみませんか?

コラム

感染症から私たちを守ってくれるワクチンですが、その接種については多様な意見が存在し、今もなお推進派と反対派の間で妥協点が見いだせない状況にあります。歴史をみても明らかに私たちの健康に寄与してくれているワクチン。その意義・役割について今一度考えてみませんか?

ワクチンとは

私たちの体には、一度侵入してきた病原体が再度体の中に入ってきた際に、再び病気にならないよう防御する「しくみ」があり、これを「免疫」といいます。そして、このしくみを利用したものがワクチンです。ワクチンは、病原体や細菌の毒素を無毒化または弱化させたもので、ワクチンを接種することで、私たちの体は免疫の記憶を得て、実際に病原体が侵入してきた際に、記憶された免疫システムが素早く反応し、私たちを病気から守ってくれるのです。

ワクチンを利用して予防できる病気は「VPD(Vaccine Preventable Disease)」と呼ばれ、現在20種類以上のVPDが存在します。これらの感染症を予防することは、現代医療における感染症対策の基本となっています。ワクチンは私たちの健康を保護するための強力なツールであり、その価値は計り知れないものがあります。

ワクチンの意義・役割

ワクチン接種の意義と役割については、以下の3つがあげられます。

● 病気から個人を守る(個人防衛):
ワクチン接種を受けた人は、その病気に対する免疫がつくられ、その結果その感染症の発症あるいは重症化を防ぐことができます。これを「個人防衛」といいます。

● 集団における感染拡大を防ぐ(集団防衛):
ワクチン接種のもう一つの重要な役割は、集団全体での感染拡大を防ぐことです。多くの人々がワクチン接種を受けて免疫を獲得することで、集団の中に感染者が出ても、その感染が広がるのを防ぐことができます。これを「集団防衛」といいます。

● ワクチン接種ができない人たちを感染から守る(集団免疫):
集団防衛が機能し集団全体で免疫を獲得することによって、妊婦や生まれたばかりの赤ちゃん、または何らかの理由でワクチンを受けることができない人たちをも感染から守ることが可能となります。この状態を「集団免疫」といいます。

これらの点から、ワクチン接種の重要性は明らかであり、個人だけでなくコミュニティ全体を保護するための重要な公衆衛生の戦略となっています。

一方で、ワクチン接種ではなく、自然に感染症にかかって免疫を獲得した方が好ましいと考える人も少なくありません。また、現代医療ではなく代替医療を支持する人や、実際にワクチン接種によって副反応を経験してしまったことなどからワクチン接種に反対の立場をとる人もいます。
特に現代社会では、個人の価値観・人生観など、その多様性は許容されるべきであることは言うまでもありませんが、ワクチンは個々人が接種することで、「コミュニティ全体を守る」という側面があることを認識するのが大切です。

社会には、妊婦さんや生まれたての赤ちゃん、免疫不全などで予防接種を受けたくても受けられない人もいます。世界の交通網が発達した現代では、ワクチン接種は個人の感染症予防にとどまらず、コミュニティを守り、国・世界へと拡大しうるリスクを予防することにもつながります。国が定期接種を受けるよう呼びかけるのもこうした目的があるためです。

まとめ

ワクチン接種が普及して感染症が減少すると、ワクチン接種の利点が目に見えにくくなる傾向があります。その一方で、ワクチン接種による副反応などのデメリットに注目が集まり、その側面が強調されがちです。
ワクチンによって予防可能な病気が明確となっている今日、ワクチン接種の意義を今一度見直し、その利点とリスクを冷静に考慮してワクチン接種をすすめることが、個人のみならず、社会全体の健康を守る上で強く求められています。

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