アルコールは健康によいのか?悪いのか?
アルコールは体に悪いとされる一方で、少量ならばむしろ健康によいという話もあり、どちらが本当なのか困惑している人も多いのではないでしょうか。今回は、「アルコール摂取は健康によいのか・悪いのか」について、これまでの研究結果をもとに解説したいと思います。
アルコールが健康によいという説(メリット)
アルコール摂取は少量であれば、動脈硬化を原因とした病気による死亡率を低下させる可能性があることが、複数の研究で報告されています。
研究結果によると、アルコールによって血液中の善玉コレステロールが増加し、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす動脈硬化を防ぐ効果があるということです。
また、適度なアルコール摂取は血糖値を低下させ、糖尿病のリスクを減少させる可能性があることも、アメリカ国立衛生研究所の研究で報告されています。
その他にも、適度なアルコール摂取は、血行促進、胃液の分泌が促進されることによる食欲増進、ストレス解消、リラックス効果、コミュニケーションの円滑化といった効果も指摘されています。
アルコールは健康に悪いという説(デメリット)
アルコール摂取は適量であれば、動脈硬化を原因とした病気のリスクを減少させるということが報告されていますが、それ以外の病気に関してはどのような影響があるのでしょうか。
がんに関して言うと、アルコールはたとえ少量であっても、がんの発生リスクを高めるという報告が主流となっています。
また、適度なアルコール摂取であっても、わずかながらも脳の損傷や知的技能の低下につながるとする研究結果も報告されています。
それ以外にも、肝臓への負担、血圧上昇、尿酸値上昇、カロリーオーバー、栄養バランスの乱れ、さらにはアルコールの過量摂取による社会生活への悪影響や、アルコール依存症といった精神的な問題につながる可能性もあります。
アルコールは健康によいのか?悪いのか?
「アルコール摂取は健康によいのか・悪いのか」については、動脈硬化への影響とがんへの影響の「つな引き」によって決まると言えます。
アルコールが健康におよぼす総合的な影響に関して、心筋梗塞やがんを含む様々な健康指標を設定し、592(世界195カ国)の研究を統合した大規模な研究が2018年に実施されています。
その研究では、1日1杯程度の少量のアルコール摂取で、心筋梗塞や糖尿病のリスクが低くなる一方で、乳がんや結核などのリスクは高くなっており、結果としてそれぞれが打ち消し合って病気のリスクは変わらないということが示されました。
すなわち、アルコール摂取が動脈硬化症や冠動脈疾患など一部の疾患リスク低下につながる一方で、アルコール摂取によってリスクが上昇する病気があり、結果的にアルコールの健康効果とされるものは相殺されてしまうと考えるのが妥当とされたわけです。
この結果を踏まえると、私たちがとるべき行動としては、結局のところ個々人が自分の健康状態や健康素因などを総合的に考慮して判断することが重要と言えます。家族にがんになった人がなく、遺伝的なリスクが低いのであれば、1日1杯程度のアルコール摂取は大きな問題にはならないでしょう。一方、がんの家族歴があるなどのリスクを有するということであれば、アルコール摂取は最低限に抑えることが望ましいと言えます。
まとめ
がんに関して言えば、現時点では、アルコール摂取はゼロの場合が一番リスクが低いとされています。
人によっては、お酒を嗜む時間が人生を豊かにしてくれるという一面もあり、医師に止められているような場合を除いては、禁酒までする必要はないかもしれません。
ですが、遺伝的にがんのリスクがある場合などは、できる限りアルコールの摂取量は抑えるべきと言えます。