人間ドックが医療費控除になる「重大な疾病」の詳細について

コラム

人間ドックと健康診断は通常ならば治療とは見なされませんが、検査の結果重大疾病などが確認され、そのまま治療に入れば医療費控除の対象になります。時として高額な費用が発生する人間ドックについては費用について控除されるかどうかで本人の負担が大きく変わりますよね。 しかし、人間らしい生涯を生きようと思うならば重大疾病には罹患したくないもの。それでも容赦なく襲ってくるのが「重大な疾病」とされる「がん」「高血圧」「心疾患」です。罹患リスクは誰にでもあります。重大疾患は歳を取るごとに罹患リスクが上昇するので、どんな病気があるのか知っておくことが大切なのではないでしょうか。

命を脅かす「重大疾病」について


・医学的な見地から見た「重大疾病」
「がん」は言うまでもなく重大疾病の領域に含まれます。そのほか「心疾患」「脳血管障害」「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」などの生活習慣病も網羅しており、将来の病気リスクを間違いなく底上げすると判断される材料もまた「重大疾病」だと考えるところが特徴的です。
ただし、脂質異常症の結果メタボリック・シンドロームと診断されても、そこから治療に進んで医療費控除を受けられる可能性は少ないかも知れません。ただし、メタボリック・シンドロームであり、かつ糖尿病であるならば医療費控除の範疇となるはずです。

・保険業界から見た「重大疾病」
人間ドックの費用が医療費控除の対象になるかどうか判断するには、当該の疾病が保険業界で「重大疾病」と認められるかどうかを指標として利用するといいでしょう。
保険業界で「重大疾病」とされる疾病は保険会社によって多少の相違がありますが、基本を「悪性新生物」「急性心筋梗塞」「脳卒中」に限定しているタイプが多く、そのためこの3つの疾病は「三大疾病」と区分して取り扱われます。
三大疾病は「特定疾患」の中から特に重大なもの、特に罹患率が高いものを特定したもので、そのほかの「特定疾患」についてもなるべく把握しておきたいところです。
厚生労働省の定める特定疾患の選定基準は「心身の病的加齢現象との医学的関係があると考えられる疾病」であり、なおかつ「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因し要介護状態の原因である心身の障害を生じさせると認められる疾病」であること。さらには「65歳以上の高齢者に多く発生しているが、40歳以上65歳未満の年齢層においても発生が認められる」ことなど。2012年には特定疾患の登録数130疾患となりました。

重大疾病の検査について

・重大疾病の検査の進め方
毎年の定期検診で各種数値の変化を見守り、適正範囲を逸脱したら再検査へ、再検査でより詳細な検査が必要と判断されたならば人間ドックへと進みます。
ただし、再検査に進んでも異常が認められなかった場合、再検査の費用も医療控除は受けられません。

・人間ドックへ進んだ場合の検査内容
人間ドックでは危惧される病気によって対象となる臓器の検体検査まで視野に入れて検査項目を組み合わせます。代表的な例として「がん(悪性新生物)」と「血管障害(心疾患と脳血管障害)」、そして、あまり知られていない疾患の中から「自己免疫不全(指定難病として潰瘍性大腸炎)」を見てみましょう。
・がん(悪性新生物)の場合
血液検査:PET検査など腫瘍の有無をリサーチする検査や、各種臓器の機能を確認する検査などを行います。人間ドックの基本は血液検査なのです。
CT検査:身体の断層画像を撮影して臓器の異常や血管の異常を探す検査です。よりこまやかな画像診断には従来のCT検査ではなく、マルチスライスCTという細かく断層画像を撮影する手法がおすすめ。
・血管障害(心疾患と脳血管障害)の場合
CRP検査:C反応たんぱくの検査で血管の炎症反応を調べます。動脈硬化が起こっていれば一定量以上のC反応たんぱくが検出されるので、この検査で心疾患や脳血管障害の危険指数を判定するのです。このほか、インスリン抵抗性指数や微量アルブミンの検査も動脈硬化の判定に有効。
超音波検査:血管を超音波で画像化し、動脈硬化の進行度を判定します。
・自己免疫不全(指定難病として潰瘍性大腸炎)の場合
自己免疫反応の異常によって起こる炎症が「潰瘍性大腸炎」で多発する各症状の根元にあります。血性下痢から潰瘍性大腸炎が疑われるケースが多いので、まずは感染症検査で細菌や原虫などによる疾患との鑑別を行います。次にレントゲン検査や内視鏡検査で炎症や潰瘍の状態を確認し、検体を採取して病理診断という流れです。同時に進行する検査項目は「便検査」「血液検査」「大腸造影検査」など。
大腸炎は長引くと発がんリスクがどんどん高くなるので注意してください。指定難病の「潰瘍性大腸炎」以外の自己免疫不全症についても炎症症状が起こるものが多いのですが、それらの発見や鑑別の際には問診が大きな手掛かりになります。ちょっとした体調不良も見逃さず日々記録する意識を持つようにしましょう。

特にがん(悪性新生物)は近年ますます日本人の罹患率が上昇しており、しかも通常の健康診断ではほとんど早期発見に至っていません。生存率を上げるには早期発見と早期治療開始が不可欠。そして、それにはやはり人間ドックが必要なのです。
検査には多少費用がかかりますが、重大な病気に罹患してからの治療費負担と比較すれば高すぎるとは言えないでしょう。
ぜひ最低でも2年に1回程度の人間ドックを受診なさるようにしてください。

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